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大阪高等裁判所 昭和33年(ラ)72号 決定 1958年7月08日

抗告人 吉田木材株式会社

主文

本件抗告を棄却する。

抗告費用は抗告人の負担とする。

理由

本件抗告理由は、末尾添附の抗告状及び抗告理由追申書記載のとおりであつて、要するに、本件緊急命令は事実の認定を誤つた不当のものであるから、これに基く過料決定も取消さるべきだというにある。

よつて考えるに、原決定は、奈良地方裁判所が昭和三十二年十二月二十日抗告人に対して同庁昭和三二年(行)第六号地方労働委員会命令取消請求事件の判決確定に至るまで、奈良地方労働委員会が同年八月九日なした救済命令のうち被解雇者に対し同人等の解雇当時受くべかりし賃金相当額の金員支払を命じた部分に従わねばならない旨の決定をなし、該決定は同月二十八日抗告人に送達されたにかかわらず、抗告人は右決定に違背して昭和三十三年一月三十一日現在に至るまでの前記賃金相当額の支払を怠つた事実を認定し、抗告人を過料に処したのである。元来労働委員会の救済命令に対して使用者より不服の訴の提起があると、その命令の確定が阻止される結果労働者の保護が完うされないことがあるのでこの点を救済するため上叙判決が確定するまでの間暫定的措置として受訴裁判所に使用者に対し労働委員会の命令の全部または一部に従うことを命ずる決定(緊急命令)をする権限を与え、使用者が右命令に違反するときは使用者を過料に処することによつて労働委員会の命令の履行を間接的に強制し、もつて労働者を保護しようとするのが法の趣旨である。そして緊急命令に対しては、その決定をなした裁判所が後日当時者の申立によりまたは職権でこれを取消しもしくは変更するのほか、他の方法によつて不服を申し立てることは許されないものと解すべきであるから、該命令が誤判であるというようなことは過料決定に対する不服の理由にならないものといわねばならない。

その他原決定には、これを取消すべき何等の違法がないから本件抗告は理由なしとしてこれを棄却すべきものとし、抗告費用の負担につき民事訴訟法第四百十四条第八十九条を適用して主文のとおり決定する。

(裁判官 加納実 小石寿夫 岡部重信)

(別紙一)

抗告状

抗告人 吉田木材株式会社

奈良地方裁判所は昭和三十三年(ホ)第一号労働組合法違反過料事件につき昭和三十三年三月五日左のような決定をなし該決定は同年同月八日抗告人に送達せられたが不服であるから本件抗告をなす次第である。

原決定の表示

被審人(抗告人)を過料金九万参千参百七拾弐円に処す本件手続き費用金弐百八拾円は被審人(抗告人)の負担とする。

抗告趣旨

原決定は之を取消すとの裁判を求めます。

抗告理由

一、抗告人会社は昭和十九年十月十一日奈良県吉野郡下市町大字下市五百九十番地製材木材売買包装木箱の製造販売業を目的として設立し吉田亀太郎所有に係る吉野郡下市町大字下市五百九十一番地所在木造木皮葺二階建工場建坪五十九坪九合四勺二階建十坪を賃借して其営業に従事して来たものであるが昭和弐拾四年頃二、三ケ月間事業不振のため工場を閉鎖し昭和三十一年八月中高原源四郎、東田中正夫、今西奈良造、高田正一、和田山久治外番頭岩本敏蔵女工二名女事務員一名を雇用してこの工場を下市工場と称していた。

二、抗告人会社は普通の木材の製材販売其他製箱販売業では採算が取れず欠損になる為め昭和三十年九月頃から関西電力株式会社と古電柱の賃挽契約をなし翌年一月頃奈良県高田市に別の工場を設け同工場に約十名の従業員を雇つていたが最近同工場に於ても素材不足に陥り更に土木建築業を兼業するに至つたのである。

三、抗告人会社は前記下市工場の事業不振のため数年間その運営に苦慮していたが昭和三十一年初頃より下市工場を閉鎖するの止むなきを覚悟し或は従業員にその経営を委ねんかとも考え或は下市工場の従業員を高田工場に配置替をなさんことも企図したか意の如くならず遂に昭和三十一年八月十八日市工場の従業員に対し解雇予告をなし当時高田工場の貨物自動車の運転に従事していた吉田博が高田工場の従業員と折合が悪く又食事のことで口やかましかつたので同工場主吉田登から会社に対し吉田博も同時に解雇して呉れとの申出があり社長吉田亀太郎は県内地理に詳しい吉田博を重宝にしていたので高田工場主に飜意を促したが止むなき実状に苦慮していたところ番頭岩本敏蔵が同年九月四日吉田博に対して解雇予告をなし社長も之を承認したのであるが下市工場の従業員は何れも下市工場の事業不振の実情を知り吉田博も自分の立場を自覚していたので解雇予告に対し不服がなかつた。

四、従業員の一人である番頭岩本敏蔵は製材の経験もあり商才もあつた為め抗告人会社が下市工場を閉鎖した後工場所有者吉田亀太郎と新に賃料一ケ月一万五千円期間六ケ月の定めで工場を賃借し(疎第一号)て製箱業を営んだが同人も採算とれず八ケ月後に工場を抛きしたのであつた。

五、而して抗告人会社(以下単に会社と称す)の従業員高原源四郎、東田中正夫、今西奈良造及高田正一の四名は中吉野の工場労働者組合の組合員であり吉田博も昭和三十一年三月迄同組合の組合員であつた解雇者和田山久治は会社の臨時雇で右組合に加入していなかつたので会社では組合費を納入していなかつた同組合規約(疎第二号)第十五条第十八条の九及第十九条の四によつて組合費を納入する事が組合員の資格があるのである。吉田博は昭和三十一年三月迄下市工場の仕事に従事し同年四月から高田工場に専属したもので右中吉野工場労働組合が地域組合(疎第二号組合規約第四条)であるから吉田博は高田工場に移つた事によつて組合員の資格を当然喪失したものであるが会社では迂濶に高田工場で吉野地区の組合の組合費を給料から天引して納入していた。

六、然るに右中吉野工場労働組合(以下単に組合と称す)は

(1) 同年八月廿日文書を以て解雇理由及解雇条件について団体交渉の開催の申入れを為し同月廿二日迄に拒否を求て来た(疎第三号)

(2) 会社は同月廿一日解雇の理由について製箱業が欠損であること及素材価格と製品価格の不釣合から欠損である事に困つて工場閉鎖の止むないことを述べ団体交渉を拒否してた(疎第四号、及疎第五号)

七、組合も亦解雇の止むない理由を認めたそこで更めて

(3) 同年八月廿七日附退職金支払についてと題する書面で吉田博を除く五名分について各人の退職金の一覧表を明細に表示して合計金三十万八千四百廿円の退職金を要求して来た(疎第六号)

(4) 退職金に付いては組合では大淀町所在の各使用者とは協定が出来ていたが会社所在の下市町の使用者との間に交渉纏らず難航中であつたため(疎第七号の(2)項)であると推定する。

(5) 組合から委員長菊本秀太郎、書記長川本敏美、副委員長等三四名と元工員高原源四郎とが三、四回会社に来て吉田博を含め六名分の退職金の金額についての団体交渉をなしたが金額の点に附いての組合は組合案を一歩も譲歩出来ないと強要せられた為決裂した。

(6) 同年九月十五日組合から分会長会議で退職金闘争の方針を決定したから実力行使をする旨の通告を受けた(疎第八号)

(7) 同年九月十六日附組合の発行する中吉野情報の送付を受けたが大きく「吉田木材分会退職金団体交渉決裂」という見出しで記事があつた(疎第九号)

八、組合は其後

(8) 同年九月二十日奈良県地方労働委員会に対し退職金要求に附て斡旋の申請をなし会社は同委員会から同月廿日附で申請受理の通知を受けた(疎第十号)

(9) 会社は之に応ずる用意をしていたところ同年十月一日附同委員会から「退職金要求に附ての斡旋申請取下の通知」を受けた(疎第十一号)

九、第六項乃至第九項即(1)乃至(9)に説示した通り解雇者も解雇予告の理由やむない事を諒承し組合も之に則つて専ら退職金の金額の交渉に日時を費すこと昭和三十一年八月廿七日附金額の提示(疎第六号)以来約壱ケ月(疎第十一号)に及んでいた重ねて言えば解雇者と会社並に組合と会社との間には会社の解雇予告の理由を諒解がついた上での退職金の金額の問題であつた退職の事が決定しないで退職金の交渉はあり得ない。之を法律的に解すれば解雇予告を承認したもので雇傭契約が合意解除となつたものであつた。退職金の金額が決定しないからとの理由で解雇予告の承認や契約の合意解除が無効になつたり取消される原因とならない第七項の(4)に記載した通り下市町所在の会社と組合との間に退職金規定が成立しておれば団体交渉の必要もない抗告会社も之に従つて退職金支払済となつて居た筈である。

十、然るに組合は再び奈良地方労働委員会に対して会社に対し会社の下市工場閉鎖が偽装閉鎖である解雇予告が組合員を排除する不当労働行為であつて労働法第七条第一号第三号違反だとして中央労働委員会規則第三十二条に依て前記各解雇を取消し原職復帰せしめ解雇から原職復帰に至るまで賃金相当額を支払はねばならない等の救済を求める申立をなした。

十一、右申立は前述の通り当事者間に合意解約の成立後解雇不当を主張しえないものであつて之に付て既に「退職金要求に附ての斡旋申請」を受理した奈良地労委では救済の申請を却下すべきにも拘ず昭和三十二年八月九日組合の右申請を含め一部之を認容した命令を発し其のうつしを受取つた。

十二、会社は奈良地方裁判所に行政訴訟を提起した(昭和三十二年行第六号)ところ右地労委は同裁判所に緊急命令の申立をなした結果同裁判所は同年十二月廿日被解雇者が経済上困きゆうしているからとの理由で判決確定に至る迄給料を支払えとの命令を発したので会社は直ちに合意解約のあつたことの外、工場を閉鎖して空工場となり会社が事業を営んでいないこと及元工員等の生活状態が会社勤務当時以上の収入ある事等を疎明して生活に困窮しているものでないことを明かにして緊急命令の取消を申請しているのである。

十三、然るに同裁判所は右緊急命令に従はないとの理由で冒頭表示の原決定の如き過料に処する旨の命令を受けたのであるが以上の理由のみでも右命令は不当であるのみならず組合の主張する如き偽装工場閉鎖でもなく会社不当労働行為がないのである此の点に附ては抗告の理由を追申するから精査されて原決定を取消されたい。

(別紙二)

抗告理由追申書

抗告人 吉田木材株式会社

奈良地方裁判所昭和三十三年(ホ)第一号労働組合法違反過料事件につき同裁判所の決定に対する抗告申立事件(大阪高等裁判所昭和三十三年(ラ)第七二号)につき左の通り抗告の理由を追申します。

第一、右奈良地方裁判所昭和三十三年(ホ)第一号労働組合法違反事件につき会社代表者吉田亀太郎が昭和三十三年一月二十三日審訊を受けた際口頭で申上げることが不充分な為め予め同日附上申書を提出した記録に添付してある筈でありますから御覧を願います。

第二、奈良地方裁判所昭和三十二年(行モ)第二号労働組合法緊急命令に対する取消申請事件(同裁判所昭和三十三年(行モ)第一号)の申請書中申請の理由及補充並訂正書を一纏めにして添付(疎第十三号証)します。

第三、抗告の理由は

一、既に提出した本件抗告の理由は抗告人会社で高田正一外五名に対し解雇予告をなして解雇したことについて同人等は之を承認して退職金の金額の折衝に移つた之が未解決の現状である。(提出済の疎第一号証乃至第十一号証)

二、緊急命令は取消さるべきものである。その理由は疎第十三号証として提出した緊急命令取消申請書の通りであるが同決定の理由は労働者の経済的困窮を排除することが立法趣旨だと前提して而も被解雇者六名の生活状態が不安定で窮乏に困窮していることを認めているけれども被解雇者六名の右決定当時生活状態が不安でもなく窮之もしていないと主張するもので六名の当時の収入状態は抗告会社勤務中に比較して多額である者が多く減少している者はない且つ生活状態が安定している。このことを以下簡単に主張し立証する。

(イ) 高原源四郎は抗告会社勤務中日給五百三十円(緊急命令疎第十四号証の一参照以下同様)で解雇後一時二、三勤務をかえているが何れも本人が勝手に止めたものでありその収入も上回つてゐる(疎第十五号証の二及疎第二十二号証)緊急命令の決定当時(昭和三十二年十二月中)は株式会社森本商店に本雇として日給六百円月収弐万二千八百四十五円あつて(疎第十五号証の一)家族も少なく生活が安定している(疎第二十三号証の中)

(ロ) 東田中正夫は抗告会社勤務中の日給は雑役夫として金四百五十円であつたが(疎第十四号証の一)雑役夫としては高過ぎる賃金である。解雇後森木材工業株式会社に最初臨時雇として四百五十円後本雇として日給金三百六十円の支給を受けている(疎第十六号証)外に妻は植村木工所で日給金二百五十円で働いていて貯蓄のある身分(疎第二十三号証中)であつて生活は安定し決して窮乏していない。

(ハ) 今西奈良造は抗告会社勤務中日給三百二十円(疎第十四号証の一)で平均一ケ月約金八千五百円(疎第十四号証の二)であり現在菱二木工所こと西村重光方に於て本雇として日給金三百五十円の支給を受けてゐる(疎第十七号証)外長男は奈良交通で運転手として月給一万五千円の収入がある。元来農家であつて生活は安定している(疎第二十三号証中)

(ニ) 高田正一は抗告会社勤務中日給金四百八十円(疎第十四号証の一)一ケ月平均一万三、四千円の収入であつた(疎第十四号証の二)解雇後鋸目立工として請負仕事をして高木製作所に於て一ケ月金六千円(疎第十九号証及第二十号証)前記西村重光方に於て一ケ月金七千円(疎第十八号証)の定収入ある外菊本材木店に於ても働き(疎第二十一号証)抗告会社勤務中より収入が上廻つているし家屋畑等の資産を有し(疎第十四号証の三及第二十三号証の中)生活は安定し決して窮乏していない

(ホ) 和田山久治は抗告会社に勤務中の日給金三百円(疎第十四号証の一)であつたが駒谷敏成方で解雇予告期間満了前である九月十日から日給金四百円で雇はれている(疎第二十二号証)之も本雇である生活状態も同人は元津風呂谷に住しダム建設の為め立退いて来た者で補償金を多額に貰つて新に田畑を買入れ両親は農に従事し金貸しさえしているもので裕福な家庭である(疎第二十三号の中)

(ヘ) 吉田博は抗告会社の高田工場に勤務していた(疎第二十六号証の一及二)日給金三百三十円手当を合せて一ケ月一万二千円程度であつた(同号の二)が現在筒井燃料店に於て日給五百円の支給を受け一ケ月約一万二千五百円程度の収入があり同人は独身で父より食糧の補助を受け生活に不自由をしていない(疎第二十三号証の中)

以上六名は殆で本雇であつてその収入や生活状態を労働組合が秘して奈良地労委を騙した結果奈良地労委が緊急命令を申請するに至つたものである、之は寧ろ抗告理由に述べた通り退職について六名全部異議なく退職金について労組が介入した為め解決しなかつたものを六名の意思に反して之と遊離して不当労働行為などと騒いでいることを如実に物語るものである。

第四、尚右六名の中和田山久治と吉田博は中吉野工場労働組合員でないその証拠は抗告会社では労働組合員の会費を受払してゐるが右二人は会費を納入していない(疎第二十七号証)会員でないから会費を納入しなかつた、会費は組合員の資格の条件である(抗第二号)尚吉田博は地域組合(同号証)である右組合の地区外の高田市に勤務しているのであつてその点からも組合員の資格がないのである。

第五、新に主張することは抗告会社は右六名を予告解雇後一時岩本敏蔵に下市工場を賃貸した(疎第一号証及第二十八号証の一乃至三)同人も昭和三十二年六月頃から事業を中止し現在下市工場は空工場であることは万人の認むるところである。抗告会社は昭和三十三年三月十三日六名に対し緊急命令通り復帰の催告を出してみた(疎第二十四号証の一乃至六)ところ組合長川本光夫氏から復帰させたいと予め電話をかけて来たが事実工場へ出頭した者は一人もなかつた、それで復帰の意思ないことを確認した(疎第二十五号証の一乃至六)之で本人達の意思と遊離して組合が虚構の事実を述べて騒いでいる事実が明らかに認められ立証することが出来たのである。之でも抗告会社は緊急命令に従はねばならないだろうか之に従はなければ過料の制裁を受くべきであろうか緊急命令申請は虚構であり緊急命令の決定も事実誤認である。

以上の理由によつて奈良地裁の過料の決定は之を取消して載きたいのであります。

【参考資料】

労働組合法違反過料事件

(奈良地方昭和三三年(ホ)第一号昭和三三年三月五日決定)

被審人 吉田木材株式会社

【緊急命令】 奈良地方昭和三二年(行モ)第二号(例集八巻六号(71)参照)

主文

被審人を過料金九万参千参百七拾弐円に処する。

本件手続費用金弐百八拾円は、被審人の負担とする。

理由

前記被審人会社は奈良県吉野郡下市町大字下市八百九番地に本店を有し、木材売買、製材、包装木箱、製造販売業を主目的として昭和十九年十月十一日設立登記なされた株式会社であるが昭和三十一年八月十八日同社中吉野工場労働組合の組合員である、高原源四郎、東田中正夫、今西奈良造、高田正一、和田山久治を被審人会社の経営不振のため工場閉鎖するとの理由で同吉田博を同年九月四日、同様理由で各解雇した。よつて、解雇者六名は、労働組合法第七条第一号第三号に違反する不当労働行為であるとして、同年九月二十九日奈良県地方労働委員会に救済の申立をしたところ、同委員会は、その申立を認容し、「被審人は東田中正夫、今西奈良造、高田正一、高原源四郎、和田山久治、および吉田博を原職に復働せしめ、解雇の日から原職復帰するまでの間、同人等の受くべかりし賃金相当額を支払わなければならない。被審人は本命令書交付の日から七日以内に縦七十五センチメートル、横一メートルの木板に墨汁をもつて「吉田木材株式会社は、中吉野工場労働組合の運営に支配介入し、その自主的な組合活動を阻害する言動を行つたことの非を認め、今後は一切斯様な行為を繰返さないことを誓約する右奈良県地方労働委員会の命令より表明する」旨明記し、被審人会社事務所北側の見易い場所にこれを十日間掲示しなければならない」との命令を発した、当該命令は、被審人会社へ交付された、そこで被審人会社は右救済命令を不服として、奈良地方裁判所に右命令の取消を求める(行)政訴訟(同庁昭和三十二年(行)第六号)を提起し、奈良地方労働委員会は、被審人を相手方として同年十月十二日同裁判所に対し昭和三十二年(行モ)第二号緊急命令の申立をなしたので、同裁判所は同年十二月二十日解雇者高原源四郎(日給五百三十円)、東田中正夫(日給四百五十円)、今西奈良造(日給三百二十円)、高田正一(日給四百八十円)和田山久治(日給三百円)、吉田博(日給二百三十円)等に対し解雇の日より右行政訴訟の判決確定に至るまで、日給相当額を支払わなければならないことを要旨とする緊急命令が発せられ、該命令正本は同月二十八日双方に送達されたのにかかわらず、これを怠つているので、被審人会社が右緊急命令受領した翌日に当る昭和三十二年十二月二十九日より昭和三十三年一月三十一日現在未だその履行をしていないものである。

右の事実は本件記録中の緊急命令に使用者が従わないことの通知書、報告書(昭和三十三年一月七日付中吉野工場労働組合より奈良県地方労働委員会宛)奈良地方裁判所昭和三十二年(行モ)第二号決定謄本、決定正本送達証明書、登記簿謄本、および被審人会社代表者代表取締役吉田亀太郎審尋の結果明らかであるから、労働組合法第三十二条、第二十七条、非訟事件手続法第二百七条の各規定に従つて主文の通り決定する。(裁判官 福井秀夫)

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